あるところに、新しい仕事を始めたばかりの「ヒカリ」という女性がいました。
彼女は周りから「優秀で努力家」と評価されているものの、なぜか自分に自信が持てません。会議で意見を言おうとしても、「どうせ失敗するかも」「私なんかが意見しても……」と考えてしまい、結局黙りこんでしまうこともしばしば。
そんなヒカリが、自分の殻を破るために出会ったのが「アドラー心理学の目的論」。原因を探すばかりではなく、「どんな未来を目指すか」に意識を向ける考え方でした。これは果たして、ヒカリにどんな変化をもたらすのでしょうか?
1. 原因論から目的論への転換
● 原因論とは
原因論は、何か問題が起きた時に「どこが悪いの?」「どうしてできないの?」と“悪い部分”に注目し、それを直そうとする考え方です。たとえば壊れたスマホや家電なら、悪い部品を見つけて取り換えれば解決しますよね。
でも「人」に対して同じように「ここがダメだから直して!」とやってしまうと、言われたほうは「私はダメなんだ…」と落ち込むばかり。なかなかうまくいきません。
● 目的論とは
これに対して目的論は、「何がダメか」ではなく「どうなりたいか」という“未来のゴール”に注目する考え方です。たとえばヒカリは会議の場で自分の意見を伝えるのが苦手。彼女に「どうして言えないの?」と責めるのではなく、「どんな話なら、少し積極的に発言できそうかな?」と“ゴールに近づく行動”を見つけてあげるイメージです。
いい状態や伸ばしたい部分に焦点を当てると、人は自然と「そっち」の方向へ進みやすくなります。これがアドラー心理学の「目的論」です。
2. 自信がない人に見られる3つの考え方のクセ

ヒカリには「自信がない」ゆえの思考パターンがありました。アドラー心理学では、こうした「考え方のクセ」に気づくことが大切と言われています。ここでは代表的な3つを取り上げます。
(1) 過去思考になっている
「昔こんな失敗をしたから、きっと今回もうまくいかない」「自分はこういう家庭環境だったから、未来も同じだろう」。このように、「過去が未来を決める」と思いこんでしまう状態です。
しかしアドラーは「人は過去に縛られる存在ではなく、未来に向けてどう行動するかで決まる」と説きます。過去の経験は完全には消えませんが、それを「役立つ学び」として捉えて新しい一歩を踏み出せばよいのです。
◎未来志向に変えるには?
- 「本当はどうなりたい?」とゴールをイメージする。
- それを実現するために、過去のできごとを「必要な経験だった」と再解釈する。
こう考え始めると、ヒカリは「過去のミスも今後のアイデアに活かせるかも」と少し前向きになってきました。
(2) 人と比べすぎる
「同僚はあんなにできるのに、私なんか…」「上司に褒められているあの人がうらやましい」。
誰でもつい人と比較して落ち込むことってありますよね?
比べること自体は悪いわけではありません。でも、比べた結果「私はダメだ」「私には何もない」と自信をなくしてしまうのが問題です。
◎ 自分軸を育てる
- まずは「自分が何を大切にしているのか」価値観を探る。
- 「何でもいい」「どちらでもいい」と言わずに、
たとえば食事の場面でも「私は◯◯が食べたい!」と言ってみる。
こうして小さなところから自分の気持ちを言葉にしていくと、人と比べるのではなく「自分はどうありたいか」が明確になっていきます。
(3) 「自信」にこだわりすぎる
「自信がついたら動こう」と考えていると、いつまで経っても行動できません。なぜなら、人がすべての面で完璧に自信を持つなんてほぼ不可能だからです。
◎ 欲しいのは「自信」より「結果」
「自信がなくても、とりあえず行動してみるか」と動き出したほうが、何かしらの成果や学びを得られます。実はアカリの職場の先輩も「俺も自信なんてない。でもやってみるんだよ」と言って背中を押してくれました。
行動→小さな結果が得られる→少しの自信が芽生える。この繰り返しのほうが、ただ頭の中で考えているだけよりずっと成長につながります。
3. 感情が行動を決める
ところで、私たちは「頭で分かっているのになぜか行動できない」ことがよくありますよね。これは「思考(頭の中の考え)」のすぐ下に「感情」があって、その感情が最終的に行動を左右するから。
・思考 → 感情 → 行動
の順番で進んでいるため、「こう動くぞ!」と決めても、気分が落ちこんだままだと体が動かないんです。
◎ だからこそ「思考の視点切り替え」が大切
先ほどの目的論のように「どうなりたい?」に意識を向けると、ちょっとワクワクして感情も前向きに整い、結果として行動しやすくなります。
4. ヒカリの変化



ヒカリは先輩から「自信がないならないでいいから、一緒に小さいことから始めてみなよ」と励まされ、次の会議で「短くてもいいから、一言だけ自分の意見を言ってみよう」と決めました。
はじめは心臓がドキドキして言葉が詰まりましたが、「でも言ってみたい未来の姿」を思い出し、一歩踏み出します。すると自分の意見に頷いてくれる同僚や上司がいて、「思いきって言ってみてよかった!」と小さな自信が湧いてきました。
この小さな成功体験を重ねたヒカリは、「自信はあとからついてくるんだ」と理解します。そこからはどんな挑戦にも「結果が欲しいからやってみる!」という姿勢になり、どんどん行動するようになっていったのです。
5. まとめ
- 原因論ばかりで「ダメな部分を直せばOK」と考えると、人間関係では逆効果になることも多い。
- 目的論は「未来はこうなりたい!」というゴールを決めて、そこへ近づく具体的な行動を強化する方法。
- 自信がない人の3つの考え方の特徴は、
- 過去ばかり見てしまう(過去思考)
- 人と比べすぎる
- 「自信」にこだわりすぎる
- 「時間は未来から流れてくる」というイメージを持ち、「本当はどうしたい?」と望む姿に意識を向けることで、過去へのとらわれから抜け出しやすくなる。
- 自信は最初から必要ない。欲しい結果があるなら、自信がなくてもやってみるのが大事。



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