ずいぶん前のことですが、私が家族と一緒にとある商業施設に行きました。
そこに1台だけUFOキャッチャーが設置されてました。
当時3歳の娘が「なにかとってほしい」と言うので、なんとなく始めました。
1台しかないので背中では、数人が並んで見ています。
ですが、全然とれません。いい感じの場所に移動させることができても、最後のつかみができません。
熱くなって数千円も使いましたが、結局何もGETできずあきらめました。
遊びで始めたのに、どうしてこんな心理になったのでしょう。
これは私のアホな体験ですが、似たような心理になったことは、みなさんも多かれ少なかれあるのではないでしょうか?
今回は、このような心理(サンクコスト効果)について、わかりやすくご紹介します。
1. サンクコスト効果とは? その心理背景について
サンクコスト効果とは、すでに支払われた費用(回収不可能な費用)が意思決定に与える影響を指します。
合理的な判断ができなくなる心理的現象の一種です。
このセクションでは、サンクコストの基本的な意味と、その心理的な背景について詳しく説明します。
過去に投資した時間やお金がどのように私たちの意思決定に影響するのかを理解することができます。
1-1. サンクコストとは何か?
サンクコストとは、すでに支払済の回収不可能な費用のことです。
たとえば、映画のチケットを購入したものの、映画がつまらなくても「お金がもったいないから最後まで観る」という行動がサンクコスト効果の一例です。すでに投資した時間やお金に縛られた判断をしてしまう心理的現象がサンクコスト効果です。
1-2. 自己責任の意識とサンクコスト効果
自己責任の意識が強いと、過去に自分が下した判断に対して強い責任感を抱き、その決定を続けなければならないと感じてしまうことがあります。この心理がサンクコスト効果を引き起こすことがあります。
具体例: 例えば、あるビジネスマンが新しい事業を始める際に、自分の判断で大きな投資を行ったとします。
しかし、その事業がうまくいかない兆候が出てきても、「自分で決めたことだから」と責任感から撤退することをためらい、さらに無駄なコストを費やしてしまうことがあります。
自己責任の意識が強く働きすぎると、過去の判断に縛られて合理的な行動を取れなくなるのです。
1-3. 無駄にしたくない・無駄だと思われたくない心理
人は「無駄にしたくない」という強い感情を持つため、すでに費やした時間やお金に固執してしまうことがあります。さらに、「無駄だと思われたくない」という他人からの評価も、この心理を強化します。
具体例: 例えば、高額なジムの年間会員券を購入したものの、実際には忙しくてほとんど通えていない状況があるとします。しかし、「せっかくお金を払ったのに、通わないのは無駄だ」と感じてしまい、無理をしてでも通おうとします。実際には別の健康維持の方法を考えるべき状況でも、過去に費やしたコストに固執して非効率的な選択をしてしまうのです。また、友人や家族に「やめた」と言うことで「無駄だったと思われたくない」という感情も、行動を続ける原因になります。
2. サンクコスト効果の具体的な事例
サンクコスト効果は、日常生活からビジネスシーンに至るまで幅広い場面で発生します。
このセクションでは、私たちがどのような状況でサンクコストに影響されるのかを具体的な事例を通じて解説します。これにより、サンクコスト効果がどのように生活や仕事に影響を与えるかをより深く理解できます。
2-1. 日常生活の事例
- 趣味の習い事を続けるかどうかの判断 趣味として始めた習い事にお金と時間を投資した後、それが自分に合わないと気づいても「ここまで続けたから」と辞めることをためらうことがあります。これがサンクコスト効果の典型的な例です。
- 恋愛「別れたいのに別れられない」 長い付き合いの恋人がいる場合、過去に投資した時間と感情が大きいため、関係がうまくいっていないと感じても「ここまで来たから別れるのはもったいない」と感じ、別れをためらってしまうことがあります。
✔脈なしだけど、尽くしてきたから簡単に諦められない
✔もう好きじゃないけど、三年も付き合ったから別れられない
✔遠距離の間、お金も時間もかけて頑張ったから別れたくない - 使わない物を捨てられない 家にある使わない物を「せっかくお金を払ったから」と捨てられずに取っておくこともサンクコスト効果の一例です。この心理により、家の中が不要な物で溢れてしまうことがあります。
2-2. ビジネスシーンの事例
- 新規事業を続けるか中止するか 企業が新規事業に多額の資金と労力を投じた後、それが成功する見込みが低いと分かっても「ここまで投資したから」とプロジェクトを続けてしまうことがあります。
- サブスクリプションを解約するタイミング サブスクサービスを利用している場合、実際には使わなくなっても「これまで払ってきたお金が無駄になる」と考えて解約をためらうことがあります。
- 会員ランクの維持に費やすリソース クレジットカードやオンラインサービスの会員ランクを維持するために、必要以上の消費をしてしまうことがあります。このように過去の投資に縛られて合理的な判断ができなくなるのも一例です。
3. サンクコスト効果を避けるための対策
サンクコスト効果に陥らないためには、過去の投資にとらわれず、現状を冷静に評価することが大切です。
このセクションでは、サンクコスト効果を避けるための具体的な対策をステップバイステップで紹介し、合理的な判断を下すための方法を説明します。
3-1. ステップ1: ゼロベース思考での検討
サンクコスト効果を避けるための最初のステップは、ゼロベースで考えることです。
過去の投資にとらわれず、現時点で最善の選択は何かを冷静に考えることが重要です。
たとえば、現在のプロジェクトが思うように進んでいない場合、「今から始めるとしたらこのプロジェクトに投資するか?」と自問し、過去のコストを考慮せずに判断するよう心がけましょう。
3-2. ステップ2: 機会損失を考慮する
次のステップとして、機会損失を考えることが重要です。
現在の選択をすることで失われる他の機会についても考えることで、無駄な投資を続けるリスクを減らすことができます。たとえば、新規事業に多額の資金を投じている場合、その資金を別のより有望なプロジェクトに投資することで得られる利益を考慮し、選択を見直すことが有効です。
✔好きじゃない人と付き合ってると、すてきな新しい人と出会えない
✔あたらしい魅力的なサービスが開始されたけど、今のサブスクと2つは無理
3-3. ステップ3: 第三者の意見を導入する
第三者の視点を取り入れることも効果的です。
他人の意見を聞くことで、自分自身では見えにくい客観的な視点を得ることができます。
例えば、信頼できる同僚や友人にアドバイスを求めることで、感情に流されず合理的な判断がしやすくなります。
3-4. ステップ4: 対策のさらなる深堀
- プロジェクトの進捗を定期的に評価する プロジェクトが順調かどうかを定期的に評価し、進める価値があるかを見極めることが大切です。定期的なチェックは、サンクコストにとらわれずに合理的な判断を行う手助けとなります。
- 撤退基準の設定 事業を始める前に、どの段階で撤退するかの基準を設定しておくことが効果的です。これにより、感情に流されずに冷静な決断ができるようになります。
- 適切なKPIの設定 成功の指標(KPI)をあらかじめ設定し、その達成度に基づいて判断を行うことで、無駄な投資を避けることができます。KPIは進捗を客観的に評価するためのツールとして役立ち、プロジェクトの継続可否を冷静に判断する助けとなります。
4. サンクコスト効果と他の概念の比較
サンクコスト効果は他の経済的概念と混同されがちですが、それぞれ異なる特性を持っています。
このセクションでは、サンクコスト効果と似た概念との違いについて解説します。
4-1. サンクコスト効果と埋没費用の違い
サンクコスト効果と埋没費用は似た概念ですが、埋没費用は過去に支払った回収不可能なコストそのものを指し、サンクコスト効果はその埋没費用に影響されて非合理的な判断をすることを指します。
4-2. 機会損失との関連性
機会損失は、ある選択をすることで失われる他の機会の価値を意味します。サンクコスト効果に陥らないためには、機会損失を考慮して現在の選択肢の中で最善のものを選ぶことが重要です。
4-3. コンコルド効果との違い
コンコルド効果とは、サンクコスト効果の一種で、特に国家や大企業などが大規模プロジェクトに投入した莫大なコストに縛られて非合理的に継続してしまう現象です。サンクコスト効果はより一般的な状況で見られる心理ですが、コンコルド効果は大規模なケースに特化しています。
5. サンクコスト効果の心理学的な深堀
サンクコスト効果に陥るのは、私たちの心理的な傾向が大きく影響しているためです。このセクションでは、確証バイアスや損失回避の心理など、サンクコスト効果に関連する心理的メカニズムについて詳しく掘り下げます。これにより、なぜ私たちが合理的な判断を妨げるのか、その根本的な理由を理解することができます。
5-1. 確証バイアスとサンクコスト効果
確証バイアスとは、自分が信じていることを裏付ける情報ばかりを集める傾向のことです。
このバイアスによって、過去の投資を正当化しようとすることがサンクコスト効果を強める原因となります。
5-2. 損失回避の心理と人間の行動パターン
人間は損失を避けたいという強い心理を持っています。
このため、過去に投資したコストを無駄にしたくないと感じ、合理的でない選択をしてしまうことがあります。
5-3. 社会的証明とサンクコストの関係
社会的証明とは、他人の行動や判断に基づいて自分の行動を決定する心理です。周りの人が同じように過去の投資を続けている場合、自分もそれに倣おうとしてサンクコスト効果に陥ることがあります。
6. サンクコスト効果とマーケティングの関係
サンクコスト効果はマーケティングの場面でも効果的に利用されることがあります。
このセクションでは、企業がどのようにサンクコスト効果を利用して顧客の行動を誘導するかについて説明します。
6-1. 無料お試し期間の効果
無料お試し期間は、ユーザーに「せっかく試したから続けよう」という心理を生じさせます。これはサンクコスト効果を利用したマーケティング手法の一つです。
6-2. 定期購入やサブスクモデルの活用
定期購入やサブスクリプションモデルは、ユーザーに「すでに払ったから解約しないほうがいい」と感じさせることで継続利用を促す戦略です。これはサンクコスト効果を活用したものです。
6-3. 会員ランクの付与と顧客ロイヤルティ
顧客にランクを付与し、その維持のために特定の消費行動を促すことも、サンクコスト効果を利用しています。過去の努力を無駄にしたくないという心理を利用し、顧客のロイヤルティを高めます。
7. サンクコスト効果を学ぶ おすすめの本
「予想どおりに不合理」 ダン・アリエリー 著 評価:★★★★
「現金は盗まないが鉛筆なら平気で失敬する」「頼まれごとならがんばるが安い報酬ではやる気が失せる」「同じプラセボ薬でも高額なほうが効く」-。人間は、どこまでも滑稽で「不合理」。
でも、そんな人間の行動を「予想」することができれば、長続きしなかったダイエットに成功するかもしれないし、次なる大ヒット商品を生み出せるかもしれない!行動経済学ブームに火をつけたベストセラーの文庫版。
面白そうだけど、本をよむのはチョット・・という方には、audibleがオススメ! 通勤中でも、家事中でも、ながらで耳から読書できます!
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私も今回ご紹介してる「予想どおりに不合理」は、audibleで聞きました。
audibleは、「全人類が使うべきだ」と真剣(マジ)で思っています!
8. まとめ
サンクコスト効果について理解することで、過去の投資に縛られることなく、合理的な判断を行うことが可能です。
日常生活やビジネスでの意思決定において、サンクコスト効果に陥らないようにするためには、ゼロベースで考えたり、機会損失を考慮するなどの対策が有効です。
さらに、マーケティングの場面でもサンクコスト効果がどのように利用されているかを知ることで、より賢明な消費行動を取ることができます。